2026.10.02
コラム
【現場のお悩み解決事例】同じ条件なのに作業者によって仕上がりが変わる。レーザー溶接の品質差を改善|溶接の困ったを解決
【現場のお悩み解決事例】
同じ条件なのに作業者によって仕上がりが変わる。レーザー溶接の品質差を改善|溶接の困ったを解決
レーザー溶接機では、機械の設定が同じでも、作業者の手の動きやトーチ操作の違いによって、ビード形状や溶け込みに差が出ることがあります。
今回は、作業者ごとの操作差による品質のばらつきに対し、ワイヤー供給速度・レーザー出力・デューティ比を見直し、条件を個別登録することで、誰でも安定した品質を再現しやすい環境を構築した事例をご紹介します。
今回のお悩み
「同じ設定で溶接しているのに、ある作業者は問題なく仕上がる一方、別の作業者ではビード形状や溶け込みが安定しない。品質差を減らし、新人でも同じように溶接できるようにしたい。」
導入前の課題
レーザー溶接機の導入後、同じ設備・同じ設定条件で作業を行っているにもかかわらず、作業者によって溶接品質に差が生じるという課題がありました。
ある作業者は安定したビード形状と溶け込みを得られる一方で、別の作業者ではビードが不安定になったり、必要な溶け込みが得られにくくなったりすることがありました。
機械の設定自体は同じであるため、初めは原因を特定しにくい状況でした。しかし、品質のばらつきは、不良率の増加だけでなく、新人教育や作業者の交代時にも負担をかける要因となります。
主な課題は次のとおりです。
・同一条件でも、作業者によってビード形状が変わる
・溶け込みの安定性に差が出る
・作業者が変わるたびに、条件出しや微調整が必要になる
・新人が安定した品質を出すまでに時間がかかる
・不良や手直しの発生につながる
・熟練者の経験や感覚に品質が左右されやすい
レーザー溶接では、レーザー出力だけでなく、トーチの移動速度や角度、ワイヤーの入れ方などによって、実際にワークへ加わる熱量や溶融状態が変化します。一般に、移動速度が遅くなると単位長さあたりの入熱は大きくなり、速くなると入熱は小さくなります。そのため、操作速度に違いがあると、同じ機械設定でもビード形状や溶け込みに差が出る可能性があります。
実施した改善
遠誠株式会社マシン事業部では、作業者ごとの仕上がりを比較しながら検証を行いました。
その結果、作業者によって手の動きやトーチ操作の速度・止め方に違いがあり、同じ設定でも実際の入熱量やレーザーが当たる時間に差が出ていることが分かりました。
そこで、作業者の操作差をできるだけ吸収し、安定した品質を再現しやすくするため、次の3項目を中心に溶接条件を見直しました。
・ワイヤー供給速度
・レーザー出力
・デューティ比
ワイヤー供給速度の調整
作業者の操作速度や求めるビード形状に合わせて、ワイヤー供給速度を調整しました。
ワイヤー供給が速すぎると、レーザーのエネルギーがワイヤーを十分に溶かしきれず、ビード形状や溶融状態に影響する場合があります。一方で、供給が遅すぎると、熱が集中しやすくなり、肉不足や入熱過多につながる可能性があります。
そのため、溶接時の手の動きとビード形状を確認しながら、安定して溶着できる供給条件を設定しました。
レーザー出力・デューティ比の見直し
レーザー出力とデューティ比を調整し、作業者の動きに対して過不足のない入熱となるよう見直しました。
デューティ比は、パルス発振時にレーザーが出ている時間の割合を示す設定です。出力だけでなく、レーザーを照射する時間の考え方も含めて調整することで、溶接時の入熱のかかり方をコントロールしやすくなります。
必要な溶け込みを確保しながら、操作のわずかな違いによって仕上がりが大きく変わりにくい条件を検討しました。レーザー溶接では、出力、照射時間、移動速度などの条件が相互に関係し、溶け込みやビード形状、熱影響に影響します。
作業者ごとの条件を機械へ登録
レーザ検証後は、作業者ごとに最適化した溶接条件を機械へ個別登録しました。
作業開始時に、担当作業者が登録済みの条件を選択できるようにすることで、その都度ゼロから条件出しを行う負担を軽減しました。作業者の操作特性に合った設定を呼び出せるため、熟練者だけに頼らず、安定した品質を再現しやすい環境づくりにつながります。
改善後の結果
ワイヤー供給速度・レーザー出力・デューティ比を見直し、作業者ごとの条件を標準化したことで、作業者による仕上がりの差を大幅に抑えることができました。
その結果、次のような改善につながりました。
作業者によるビード形状・溶け込みの品質差を大幅に削減
新人でも安定したレーザー溶接を行いやすくなった
作業者が変わるたびに必要だった条件出しの時間を短縮
不良や手直しの発生を低減
作業手順と条件設定の標準化を実現
熟練者の感覚だけに依存しにくい作業環境を構築
特に、担当者の経験や感覚に左右されやすかった工程において、条件を見える化・登録することで、教育や引き継ぎを進めやすくなった点が大きな改善点です。
エンジニアコメント
レーザー溶接は高精度な加工ができる一方で、トーチの移動速度や角度、ワイヤーの入れ方など、作業者の動きによる影響を受けることがあります。
同じ設定なのに仕上がりが安定しない場合は、機械の不具合と決めつけるのではなく、実際の作業者ごとの操作を確認することが重要です。手の動きによって、レーザーが同じ箇所に当たる時間や、単位長さあたりの入熱が変わる場合があります。
ワイヤー供給速度・レーザー出力・デューティ比を適切に調整し、条件を標準化・登録することで、誰でも安定した品質を再現しやすい環境づくりが可能です。
実際の条件設定では、材質、板厚、継手形状、必要な溶け込み、ワイヤー径、作業姿勢、求める外観品質などを総合的に確認することが大切です。
同様のお悩みはご相談ください
「同じ条件なのに作業者によって仕上がりが変わる」「新人教育に時間がかかる」「担当者が変わると不良や手直しが増える」「レーザー溶接を標準化したい」といったお悩みは、条件の見直しや登録方法の工夫によって改善できる場合があります。
遠誠株式会社マシン事業部では、ワークの材質・板厚・継手形状・必要な溶け込み・作業方法を確認し、テスト加工を通じて、現場に合った溶接条件をご提案します。レーザー溶接の品質安定化や、作業者ごとのばらつきにお困りの際は、ぜひご相談ください。
